彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 「俺も行っていいかな?」

 さらっとした声が割り込んだ。

 顔を上げると、瀬名先生が箸を持ったままこちらを見ている。

 「え」

 固まる私の横で、しげぴーがゆっくり先生を見る。

 「……先生も来るんすか」

 「ダメ?」

 先生は笑った。

 その笑みは柔らかいのに、どこか一歩も引くつもりがないように見える。

 しげぴーは少しだけ目を細めた。

 「今日は、吉岡と二人で行くつもりなんで」

 その言葉に、食堂のざわめきが一瞬だけ遠のいた気がした。

 私の箸を持つ手が止まる。

 しげぴーが、こんなふうにはっきり言うなんて。

 瀬名先生は一瞬だけ黙った。

 けれど、すぐにふっと笑う。

 「そっか」

 あまりにもあっさりした返事に、逆にこちらが戸惑う。

 先生はコップの水をひと口飲んでから、私を見た。

 「じゃあ、今日は重田くんに譲るよ」

 「……え?」

 その言い方に、また心臓が跳ねる。

 先生は口元だけで笑って、続けた。

 「その代わり、次は俺の番ね」

 その言葉と笑みに胸の奥がギュンと鳴った。

 顔が熱くなる。

 そわそわして、隣のしげぴーを見ると、真っ直ぐ瀬名先生を見据えていた。

 だれも、何も言わない。

 その沈黙があまりに重たくて、私は、何も言えないまま二人の顔を見比べていた。
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