彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません
瀬名先生は相変わらず余裕のある表情で、何でもないことみたいに最後の一切れのチキン南蛮を口に運んでいる。
一方で、隣のしげぴーも黙々と食べすすめているのに、どこか空気がぴんと張り詰めている。
二人とも別に言い合っているわけじゃない。
それなのに、落ち着かない。
私も、箸を持つ手をゆっくりと動かすことしかできなかった。
瀬名先生はふっと笑って立ち上がる。
「じゃ、お先」
軽く手を上げて、そのまま食堂を出ていった。
白衣のないスクラブ姿の背中が、人混みの中に紛れていく。
私はしばらく、その背中を目で追っていた。
――その代わり、次は俺の番ね。
そう言った先生の顔がすぐに頭の中に浮かんだ。
どうしよう。
二人きりになったら何を話せばいいんだろう。まだ気持ちの整理はついていないのに。
隣で、しげぴーが小さく息を吐いた。
「……あいつ、ほんと嫌いだわ」
ぽつりと零れた本音に、思わず苦笑する。
「そんなに?」
「ああ、かなり」
きっぱり言い切ってから、しげぴーは私の方を見た。