彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

友達じゃなくて


 仕事終わりの居酒屋は、平日だというのに思ったよりも賑わっていた。

 ガヤガヤとした話し声と、グラスや食器が触れ合う音。焼き物の香ばしい匂いが店内に広がっている。

 席に案内されて向かい合うと、しげぴーはメニューを開きながら、いつも通りの調子で言った。

 「とりあえず、生でいい?」

 「あ、うん」

 頷きながら、おしぼりで手を拭く。

 しげぴーが呼び出しボタンを押した。

 大学時代から付き合いの長いしげぴーと飲む時間は、不思議と気が楽だ。

 注文を終えると、しげぴーは肘をテーブルにつきながら、ちらりとこちらを見る。

 「今日、疲れたな」

 「うん、ちょっとバタバタしてたしね」

 「だよな。午前中、普通に地獄だったわ」

 「わかる。でも、今日も平和に終わってよかったね」

 思わず笑うと、しげぴーもつられて笑った。

 こういうやり取りは、なんというか、ほっとする。

 気を遣わなくていいし、変に構えなくてもいい。

 肩の力を抜いていられる時間。

 運ばれてきたビールのグラスを軽く合わせる。

 「お疲れ」

 「お疲れさま」
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