彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 一口飲むと、喉を通る冷たさに、少しだけ息が抜けた。

 それでも、心に引っかかっているものは、簡単には消えてくれない。

 気を抜くとすぐに顔を出して――また、昼間の光景がよぎる。

 瀬名先生の、あの余裕のある笑み。

 目が合った瞬間、全部見透かされたみたいに、逃げ場がなくなるあの視線。

 人混みに紛れていく後ろ姿。

 ――その代わり、次は俺の番ね。

 あれも、きっと冗談なんかじゃない。

 「……おい」

 名前を呼ばれて、はっと顔を上げた。

 「え?」

 「いや、“え?”じゃなくて。今、完全にどっか行ってたろ」

 しげぴーが呆れたように笑う。

 「あ、ごめん」

 苦笑いで返すと、しげぴーの顔からゆっくり笑顔が消える。

 「……あいつのこと?」

 ドクン、と心臓が跳ねた。

 思わず視線を逸らす。

 「ちが……」

 否定しようとして、言葉が続かない。

 その反応だけで答えになってしまっていたのか、しげぴーは小さく息を吐いた。

 「図星か」

 責めるような言い方ではない。

 むしろ、どこか納得したような声だった。

 私は何も返せなくて、グラスに口をつけた。

 「あいつに何か言われた?」
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