彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 「ううん、何か言われたわけじゃないんだけど……」

 なんて言ったらいいかな。

 瀬名先生と私の今までのやり取りをしげぴーは知らない。

 私の瀬名先生への想いも、全部話してしまっていいのかな……。

 私は枝豆をひとつ摘まんで、殻を割った。

 「……しげぴーはさ、知ってたんだよね」

 「なにを?」

 「私と瀬名先生が、その……大学のとき付き合ってたこと」

 しげぴーの手が一瞬だけ止まる。

 「……思い出したのか?」

 探るように聞いてきたしげぴーに、私は首を横に振った。

 「ううん。真由ちゃんから聞いたの」

 一拍置いて、しげぴーの視線がわずかに揺れる。

 「そっか」

 短く返したあと、しげぴーは小さく息を吐いた。

 「どうして今まで言わなかったの?」

 問いかけながらも、責めたいわけじゃないことは自分でもわかっていた。

 ただ、知りたかった。

 私だけが何も知らないまま過ごしていたあの時間が、急に怖くなったのだ。

 しげぴーはグラスを手にしたまま少し視線を落とす。
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