彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 「言っていいのか、わかんなかったから」

 「……」

 「吉岡、事故のことは覚えてても、あいつのことだけ抜けてたし」

 それを聞くだけで、胸の奥がずきっと痛む。

 「下手に思い出させようとして、余計しんどくさせるのも、違うかなって」

 しげぴーはそう言って、少しだけ困ったように笑った。

 「俺ら、あの頃まだガキだったし。何が正解かなんて、正直わかんなかった」

 責められたわけじゃないのに、喉が詰まりそうになる。

 私はグラスの縁を指でなぞりながら、小さく息を吐いた。

 「このあいだ、しげぴーと瀬名先生が話してたのも、少し聞いちゃって」

 しげぴーの表情がすっと変わる。

 「それで、気になって真由ちゃんに連絡したの」

 「……そうか」

 短く返した声には、少しだけ苦さが滲んでいた。

 「大学のとき付き合ってたことも、事故のあと、瀬名先生がずっとお見舞いに来てくれてたことも聞いた」

 そこまで言って、喉が詰まる。

 「……なのに、私、何も覚えてなくて」
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