彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 「……」

 図星すぎて何も言えない。

 しげぴーは焼き鳥を一本取って、タレの匂いが立ちのぼるそれをひと口かじった。

 「吉岡は何も悪くないから、全部。瀬名のこと覚えてないのも、吉岡のせいじゃない」

 私は思わず視線を落とした。

 そうは言われても、私が瀬名先生のことを忘れてしまったことで、瀬名先生を傷つけてしまったことは確かだ。

 覚えていないのは事実で、置き去りにしてしまった時間があるのも事実だから。

 「……でも、先生はずっと覚えてた」

 ぽつりと漏らすと、しげぴーの箸が一瞬止まった。

 「そりゃ、そうだろうな」

 「……私のこと、まだ好きなのかな」

 言ってから、はっとする。

 今、目の前で告白されたばかりなのに。

 無神経にも程がある。

 しげぴーは少しだけ笑った。

 「今さらそこ疑ってんの?」

 「……だって先生、みんなにあんな感じだと思ってたから……」

 「そう見せてるだけだろ」

 そう言い切られて、胸がざわつく。

 しげぴーはグラスを持ち直しながら続けた。
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