彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

ちょっと我慢できなかった


 店を出ると、夜の空気が少しだけ冷たかった。

 アルコールでほんのり熱を帯びていた頬にその冷たさが触れて、じんわりと現実に引き戻される。

 駅までの道をしげぴーと並んで歩く。

 さっきまであんなに言葉を交わしていたのに、今は不思議なくらい静かで――お互いほとんど口を開かないまま、時間だけが過ぎていく。

 靴音だけがやけに大きく響いていた。

 改札の手前で、しげぴーが立ち止まる。

 「じゃ」

 「……うん」

 それだけで終わるはずだったのに、しげぴーは一度だけ私を見て、少しだけ眉を寄せる。

 「考えすぎんなよ」

 短く言って、今度こそ背を向けた。

 改札の向こうへ消えていく後ろ姿を、私はしばらくそのまま見送る。

 ――俺は、吉岡のこと好きだけど。

 ふと、さっきの言葉が胸の奥に引っかかるように浮かんできて、小さく息を吐いたそのときだった。

 スマホが震える。
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