彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 画面を見ると、表示されている名前に一瞬だけ指が止まった。

 ――瀬名先生。

 そのまま、ゆっくりとメッセージを開く。

 『まだ一緒にいる?』

 短い一文。

 けれど、それだけでさっきまでの時間を見透かされているような気がして、思わず視線が揺れた。

 少しだけ迷ってから、私は画面に打ち込む。

 『今、別れました』

 送信してすぐ、既読がつく。

 『迎えに行っていい?』

 えっ……

 駅前のざわめきが、少し遠くなる。

 ドクドクドクと加速する脈。

 断ろうと思えば断れる。

 今日はもう遅いし、さっきまで飲んでいたばかりで、理由なんていくらでも作れるはずなのに――

 そのどれもが、うまく浮かばなかった。

 スマホを持つ指だけが、止まったまま動かない。

 今、会っていいの?

 頭の中が忙しくて、落ち着かない。

 『もう遅いので……』

 『申し訳ないので……』

 と文字を打ってみては消すを繰り返す。
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