彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません
「他の男と二人でいるのは」
レンズ越しの瞳に、射抜かれるみたいに見つめられて、思わず息を飲む。
その意味に気づいた瞬間、胸の奥がきゅっと甘く痛んだ。
青信号に変わり、車がまた動き出す。
それでようやく、張り詰めていた空気が少しだけほどけた気がした。
先生が、容赦ない気がする。
車の中で二人きり。家に着くまで耐えられる自信が全くなくなった。
でも、それは杞憂だったみたいで。
そのあとは、ドライブスルーでコーヒーを買って、少しだけ遠回りをした。
他愛もない会話をしている間は、不思議と少しだけ落ち着いていく。
やがて、車は見慣れた道へと戻ってきた。
もうすぐ家に着く、という距離。
さっきまで軽くなっていたはずの胸の奥が、またゆっくりと重さを増していく。
このまま何も言わずに終わるのは、違う気がした。
言わなきゃいけないことがある。
そう思った瞬間、言葉が先に出ていた。
「……私たち」
自分の声が、少しだけ震える。
「付き合ってたんですよね」