彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 その言葉に、瀬名先生の手がわずかに止まる。

 「聞いたんだ」

 「……はい」

 それ以上、続ける言葉が見つからない。

 沈黙が落ちる。

 しばらくして、車が静かに停まり、エンジンが切られた。

 夜の静けさだけが、車内に満ちる。

 「……どう思った」

 低い声。

 横を見ると、視線が絡む。

 「……どうって……」

 うまく言葉にできない。

 何から話せばいいのかもわからない。

 そんな私を見て、瀬名先生はほんの少しだけ目を細めた。

 「困ってる顔してる」

 その言い方が、やさしいのに逃げ場がない。

 思わず小さく息を漏らす。

 「……うまく言えなくて」

 視線を落とした指先に力が入る。

 何から話せばいいのかもわからなくて、言葉が続かない。

 先生は、今までどんな気持ちでいたんですか……

 私が憎くないんですか……

 どうして今も――

 考えれば考えるほど、うまく言葉にならない。
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