彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 そんな私を、瀬名先生は急かすこともなく、ただ静かに待っていた。

 その沈黙が、余計に逃げ場をなくしていく。

 やがて、ゆっくりと息を吐く気配がして――

 「じゃあ、言うけど」

 少しだけ低くなった声。

 「今も、好きだよ」

 息が止まった。

 ゆっくり顔を上げると、真剣な眼差しの先生と目が合って、

 「ひより」

 名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねた。

 なぜかわからないけど、泣きそうになる。

 「無理に思い出さなくていい」

 静かで、やわらかい声。

 「でも、このまま終わらせるつもりもない」

 はっきりとした言葉が、逃げ道をふさぐ。

 視線が逸らせない。

 「どうするかは、ひよりが決めていい」

 一度外れた視線が、また戻る。

 「……でも」
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