彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 勤務が終わり外に出ると、空はまだわずかに明るさを残していて、日が落ちきる前の静けさがあった。

 少しひんやりとした空気が肌に触れて、少しだけ足がすくむ。

 覚悟しているはずなのに、私たちの関係が、これから変わってしまうかもしれないと思った瞬間、胸の奥がざわついた。

 スマホに届いていた短いメッセージを頼りに、いつもの公園へ向かう。

 ベンチに座るしげぴーの姿を見つけたとき、心臓が一度だけ大きく鳴った。

 もう逃げられない。

 同時に、逃げたくないとも思っている自分がいた。

 そのまま隣に座ると、しげぴーはちらっと私を見て、「おつかれ」と言うと、すぐ前を向いた。

 「……おつかれ」

 短く返してから、言葉が続かなくなる。

 いつもならどうでもいい話が自然と出てくるのに、今日は何も浮かばない。

 しげぴーも無理に話そうとはしなかった。

 ただ、待ってくれているのがわかる沈黙があって、それが余計に逃げ場をなくしていく。
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