彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 「私ね」

 やっと声が出た。

 少しだけ震えているのが、自分でもわかる。

 「この前のこと、ちゃんと返事しなきゃって思ってて」

 それだけ言うと、しげぴーはわずかにこちらに視線を向けた気がしたけれど、何も言わない。

 急かさない、その距離がありがたくて、同時に苦しい。

 「すぐに答えられなくて、ごめん」

 そう言いながら、自分の指先に視線を落とすと、少しだけ冷たくなっているのに気づく。

 「やっぱりこのままは、良くないなと思って」

 一度息を吸って、それからゆっくり吐く。

 ここで止めたら、また同じことを繰り返す気がした。

 「私ね、瀬名先生が好き」

 口にした瞬間、周りの音がふっと遠のいたような気がした。ドクドクと鼓動が乱れる。

 しげぴーは、すぐには何も言わなかった。

 視線を逸らさないまま、ほんの少しだけ息を吐いて、

 「……そっか」

 とだけ言う。

 それだけなのに、軽く受け流されたわけじゃないことがわかって、余計に胸の奥がきゅっとなった。

 「ごめん」

 思わずこぼれた言葉に、

 「なんで謝るんだよ」

 と、静かに返ってくる。

 その声音に、何も言えなくなる。
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