彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 夜の道は思ったよりも空いていて、信号に引っかかることもなく、車は静かに進んでいく。

 流れる景色をぼんやりと目で追いながら、意識は自然と別の方へ引き寄せられていった。


 ――あの日の車内。

 ひよりが、俺たちの過去を知った日。

 あのとき、抑えていたものが一気に溢れて、気づけば口にしていた。

 『ひより』

 久しぶりに本人を目の前にして、その名前を口にした途端、胸が震えた。

 少し潤んだ目で俺を見るひよりに、理性が揺れて、気づいた時には触れていた。

 唇に触れそうな一歩手前で、ギリギリ理性が働いて踏みとどまった。

 危なかった。

 その帰り道、俺は暴走しかけたことを深く反省した。

 でも、思わぬかたちでひよりが俺たちの過去を知ってしまった。こうやって知ってしまう可能性は、ゼロではなかったけど、もう、過去はどうでもいいとさえ思ってきていた。

 ひよりと、またやり直せるなら。
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