彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 でも、変わっていないのは、ひよりだけじゃない。

 たぶん、俺も同じだ。

 あの頃より、少しは距離の取り方を覚えたつもりでいたのに、いざ目の前にしたら、そんなもの簡単に崩れる気がしている。

 実際、この前も危なかった。

 30代になった今、大人になったつもりが、気持ちは今も全く変わっていないことに気付かされる。

 小さく息を吐いたところで、信号が変わる。ハンドルを握り直すと、そのままゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
 
 駅前に近づくにつれて、車の流れが少しだけ増えてくる。減速しながらロータリーへと入っていくと、見慣れた景色のはずなのに、妙に鮮明に見える気がした。

 適当な場所に車を寄せて停める。

 エンジンは切らないまま、前を見た。

 まだ、いない。

 そう思った瞬間、無意識に視線が人の流れを追っていた。

 改札の前で立ち止まる人、誰かを待っているようにスマホを見下ろしている人、足早に通り過ぎていく人。

 その中に、見慣れた姿を探してしまう自分に気づいて、思わず小さく息を吐く。

 ……落ち着け。
< 150 / 167 >

この作品をシェア

pagetop