彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません
でも、変わっていないのは、ひよりだけじゃない。
たぶん、俺も同じだ。
あの頃より、少しは距離の取り方を覚えたつもりでいたのに、いざ目の前にしたら、そんなもの簡単に崩れる気がしている。
実際、この前も危なかった。
30代になった今、大人になったつもりが、気持ちは今も全く変わっていないことに気付かされる。
小さく息を吐いたところで、信号が変わる。ハンドルを握り直すと、そのままゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
駅前に近づくにつれて、車の流れが少しだけ増えてくる。減速しながらロータリーへと入っていくと、見慣れた景色のはずなのに、妙に鮮明に見える気がした。
適当な場所に車を寄せて停める。
エンジンは切らないまま、前を見た。
まだ、いない。
そう思った瞬間、無意識に視線が人の流れを追っていた。
改札の前で立ち止まる人、誰かを待っているようにスマホを見下ろしている人、足早に通り過ぎていく人。
その中に、見慣れた姿を探してしまう自分に気づいて、思わず小さく息を吐く。
……落ち着け。