彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 見つめ合ったまま訪れる沈黙。

 ………言ってしまった。

 時間が、止まったみたい。

 さっきまであんなにうるさかった心臓の音が、急に遠くなった気がして、代わりに、先生の呼吸の気配だけが近くにある。

 何か言わなきゃいけないのかもしれないのに、もうこれ以上、何も言えない。

 逃げ場は、もうどこにもない。

 それでも――

 目を逸らすことだけは、しなかった。

 鼻の奥がツーンとする。

 先生の瞳が少し揺れた気がした。

 「………ありがとう」

 その声は少し掠れていた。

 「ひより」

 一呼吸飲み込んで呼ばれたその名前に、私の目から一筋涙が溢れる。

 「……俺も、ずっと好きだよ」

 そう言って、ゆっくりと伸びて来た手は私の涙を拭う。

 口元が少しだけ上がって、そのまま涙がこぼれた。
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