彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 「わ、私……っ、思い出せっないのに……いいんですかっ……?」

 先生の整った顔が、涙でぼやける。

 「思い出さなくていい。俺がちゃんと覚えてるから」

 先生の瞳も声も、真っ直ぐで、

 「また、俺を好きになってくれたなら……それだけでいいんだ」

 「うっ……」

 堪え切れずに声まで漏れて、視線を落とした。

 嘘のない誠実な思いに、胸がこれでもかと言うほど締め付けられる。

 「ひより」

 そう呼ばれて、また視線が絡む。

 ゆっくりと距離が縮まって、先生の手が頬に触れた。

 息も整わないまま、そっと唇が触れる。

 優しく、ほんの数秒。

 ゆっくりと離れた唇は、まだお互いの吐息がかかる距離にあって、

 「……ヤバいな」

 そう言って、頬に触れていた手がそのまま後ろに回ったかと思うと、コツンと額が合わさった。

 
< 158 / 167 >

この作品をシェア

pagetop