彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません


 向かった先は、更衣室の奥に続くスタッフ専用通路。

 日勤終わりのこの時間帯は人通りも少なく、白い蛍光灯の下に俺たちの足音だけが静かに響いている。

 通路の突き当たりで、重田くんが足を止めた。

 ここなら、誰にも聞かれないか。

 俺は壁に軽く背を預け、口元にうっすら笑みを浮かべた。

 「それで? こんなとこまで連れてきて、何の用かな」

 重田くんは一瞬だけ視線を落とし、それから真っ直ぐ俺を見た。

 「わかってますよね。吉岡に近づかないでください」

 真正面からの直球に、思わず喉の奥で小さく笑いが漏れた。

 「それは無理かな」

 さっきまで冷静を保っていた重田くんの目が鋭くなり、一気に戦闘モードへ切り替わる。

 「気を遣わなくていいよ。今はドクターと看護師じゃなくて、男同士だからね」

 ――そっちの方が、俺も遠慮しなくて済む。

 「吉岡は、アンタのこと覚えてないんだよ。だから、もうそっとしといてくれませんか」

 「君には、関係ないよね」

 「関係ある。これ以上、吉岡が傷つくところは見たくないんだよ」

 食い気味の返答。その視線が、真っ直ぐ俺を射抜く。

 「……重田くんはさ、ひよりの何?」
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