彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 一瞬の間。

 重田くんは視線を逸らさず、静かに言い切った。

 「少なくとも、あんたに遠慮する立場じゃない」

 その答えに、胸の奥がわずかにざわつく。

 けれど俺は、口元の笑みを崩さないまま、ゆっくりと目を細めた。

 短い沈黙が、二人の間に静かに落ちる。

 「アンタと一緒にいれば、ひよりはまた傷つく。実際そうだろ。アンタのせいで吉岡は事故に遭って……アンタは吉岡の前から逃げたんだ」

 ――古傷を、容赦なく抉られる。

 確かに、ひよりが事故に遭ったのは俺のせいだ。

 でも俺は、

 「逃げてない」

 そう言い切ったはずなのに、重田くんの低い声が静かに突き刺さる。

 「吉岡を置いて海外へ行ったくせに」

 さらに重田くんは、感情を抑えたまま言葉を重ねる。

 「戻ってきてから、ずっと吉岡のこと見てたんだろ」

 淡々とした声音。

 「ちゃんと、アンタ以外とも恋愛できるんですよ」

 その一言で、止まっていたはずの記憶が、不意に浮かび上がる。
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