彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません

 男子更衣室は、この通路の奥にある。

 少し待っていれば、きっとここを通るはずだ。

 壁にもたれながら、ぼんやりとスマホの画面を眺める。

 けれど、視線はほとんど文字を追っていなかった。

 ……というか。

 気づくと、頭に浮かんでいるのは別の人の顔だった。

 ……瀬名先生。

 今日の廊下でのやり取りを思い出してしまって、胸の奥がくすぐったくなる。

 「また考えてる……」

 自分でも呆れてしまって、思わず小さく息を吐いた。

 そんなことを考えていた、その時だった。

 通路の奥から、低い声が聞こえてくる。

 反射的に顔を上げると、そこには瀬名先生としげぴーがいた。

 ミスマッチな組み合わせに、少し胸がざわつく。

 どうしたんだろう。

 しげぴーは瀬名先生が嫌いなはずで……

 嫌な予感がする。

 気になった私は、二人のあとをそっと追った。

 足音を立てないように歩き、通路の柱の陰に身を隠す。

 悪いことをしているようで、少し罪悪感が胸をよぎった。

 二人の間の空気がどこか張り詰めていて、喧嘩でもするんじゃないかと、心臓が不穏な音を立てている。

 しげぴーが瀬名先生のことをよく思っていないことは、私もよく知っている。

 前に飲み会のあと、掴みかかりそうな勢いだったことを思い出した。そんなことになったら、すぐ止めに入らないと。
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