彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません


 大学時代から変わらない柔らかな雰囲気で、真由ちゃんがこちらへ歩いてくる。肩までの黒髪が揺れて、優しい笑顔を浮かべている。

 今は別の総合病院で看護師をしているはずなのに、こうして会うと一瞬で大学時代の空気に戻る気がした。

 「ひより、ごめん、待った?」

 「ううん、私も今来たとこ」

 咄嗟にそう答えたけれど、真由ちゃんの目はすぐにテーブルの上のグラスへ向いた。ほとんど減っていない結露したカフェオレを見て、真由ちゃんは小さく笑った。

 それでも何も言わず、向かいの席に腰を下ろす。

 「急にどうしたの? この間のメッセージ、なんかいつもと違ったから心配したんだけど」

 その優しい声に、胸の奥がじんと熱くなった。

 ここに来るまでは、聞きたいことはもっと簡単に口にできると思っていた。

 でも、いざ真由ちゃんを目の前にすると、何から話せばいいのかわからなくなる。

 少しの沈黙のあと、私は膝の上で手を組み直した。

 「……真由ちゃんに、聞きたいことがあって」

 真由ちゃんは急かすこともなく、静かに頷いた。

 「瀬名瑞貴さん、って知ってる?」

 その瞬間、真由ちゃんの表情が止まった。

 ほんの一瞬、息を呑んだのがわかる。

 やっぱり――。

 胸がどくんと大きく鳴った。

 「……うん。知ってるよ」

 「やっぱり、そうなんだね」

 「ひより、それ……どうして今、瀬名先輩の名前が出てくるの?」
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