彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません


 「瀬名先輩を見て、“真由ちゃんの彼氏さん?”って言ったの」

 ドクンと不整な脈を打って、胸の奥を激しい痛みが襲う。

 喉の奥がぎゅっと詰まった。

 自分の言葉が、あまりにも残酷で。

 瀬名先生は、どんな顔をしていたんだろう。

 嬉しかったはずの再会の瞬間に、私の言葉はきっと――

 「……私、最低」

 小さく呟くと、真由ちゃんは少し困ったように眉を下げた。

 「そんなことないよ」

 真由ちゃんは首を振る。

 「瀬名先輩、嬉しかったと思う。ひよりが目を覚ましたから。でも……自分のことだけ忘れられてて」

 静かな声が続く。

 「それでも毎日来てたよ。“私の彼氏”ってことにして」

 私は言葉を失った。

 カフェの中は賑やかなはずなのに、その瞬間だけ音が遠くなった気がした。

 私はただ、呼吸をすることしかできない。

 そういえば当時、真由ちゃんが彼氏さんを連れてお見舞いに来ていた。

 それが、瀬名先生だったなんて。
< 93 / 122 >

この作品をシェア

pagetop