彼と別れた瞬間、チャラいドクターからの求愛が止まりません


 「そのあと、柿谷先輩は大学来なくなったの」

 「え?」

 「噂とかあって、居づらくなったみたい。しばらくして退学したって聞いた」

 そうなんだ、と小さく呟く。

 怒りは湧かなかった。

 ただ遠い出来事みたいに感じる。

 「しばらくして瀬名先輩、海外行ったの」

 そこまで言って、真由ちゃんは口を止めた。

 私は顔を上げる。

 でも、それ以上は続かなかった。

 代わりに優しい目で私を見る。

 「……ひより」

 「うん」

 「今、瀬名先輩のこと、どう思ってるの?」

 すぐには答えられなかった。

 「好き」とか、そんな簡単な言葉で片づけられない。

 知らなかった過去が突然現れて、今までの全部の意味が変わってしまった気がする。

 瀬名先生の優しさも。

 時々見せる寂しそうな目も。

 あの人が私に向ける言葉の一つ一つも。

 全部。
< 94 / 122 >

この作品をシェア

pagetop