月とスッポン  一生に一度と言わず
「その柱は木除杭といいます。
《五十鈴川の増水や氾濫の際に、上流から流れてくる流木が宇治橋の橋脚へあたることを防ぎ、橋を守る為に建てられています。
 これを見て橋を造り替えるときの橋脚といわれる方がいますが、下流に仮の橋をかけてから工事を行うので、宇治橋の位置は変わりません》」
「へー」

自然に、思いを悟られないように、自然に。

そう思えば思うほど、口数が減る。

「《宇治橋は本来、傷みがひどい際に修繕や架け替えを行っていましたが、
式年遷宮から遷宮に合わせて20年に一度架け替えされるようになり、今の宇治橋は平成21年に渡始式が行われました。
宇治橋の架け替えは遷宮の4年前です。
それは第二次世界大戦後の混乱によって第59回式年遷宮が延期された際に、全国の崇敬者からせめて宇治橋だけでも架け替えようとの熱意によって、予定通り式年遷宮の年に架け替えられ、以来、遷宮の4年前が恒例となっています。
なので、宇治橋が建て替えられる年が本来の式年遷宮の年になりますね》」

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