月とスッポン  一生に一度と言わず
「実際に触らないとわからなくないですか?好きか嫌いかなんて」

もう一度、ニシキヘビを愛でるポーズをする。
まだ見ぬきっと可愛いだろうニシキヘビを撫でる。
そんな不思議そうな顔をしないで欲しい。

「どんな重さだったとか肌触りとか温度とか。
別々で同じようなものを触れても、本物の生きた感触とは違うと思いますけどね。
それに、何が悪いとかではなく、直感的にダメって思う物もあれば、全然平気だったって事もあると思いますよ」

首を傾げて、可愛いではないか!
エアニシキヘビを撫で続ける。

「お客さんだって『怖そう』って思う人ほど優しかったり、『優しそうな人だなぁ』って思っても傲慢だったりしますよ。
写真だけで判断するには危険だから気をつけなさいってよく佳代子さんが言ってるし」

エアニシキヘビの顔が乗っている右手に大河の手が乗る。
しまったと思ったが、時すでに遅し。
しっかりと手を握られている。

五丈殿を横目に通り過ぎ、正宮の前にある御贄調舎が見えている。少しぐらいこのままでいても許されるだろう。

そう思い直し歩き続ける。

「佳代子さん?」
「会った事なかったですか?うちの看板娘です」

首を傾げながら「残念ながら」と思い出せないでいる大河にヒントを与える。

「酸いも甘いも知り尽くし、1周回ってギャルよりもポジティブな佳代子さんを知らないなんて!当店の名物ですよ!もったいない」

あぁと大河が呟く。どれが佳代子さんかわかったようだ。
よかった、よかった。

< 28 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop