月とスッポン  一生に一度と言わず
そう思うと無性に腹が立つ。

奈良から始まって、長野に鎌倉。海との2人初詣にも勝手についてきた。
そして今回。これはもう諦めるレベルなのだろうか?

今回こそと気合を入れて出発すると現れる大河。
毎回気合を入れるのも、脱力するのめんどくさい。

そう、全てがめんどくさいのだ。

大きなため息をつき、すっかり冷めたラテを飲み切る。

「もういいです」
「何がですが?」
「すべてが」

抵抗する事を放棄した私に大河は不服そうだ。

「6月ぐらいに連休がもらえるそうです。そこで滋賀に行く予定です。休みが決定したら連絡しますので、都合がつくなら一緒に行きますか?」

そうだ。初めからこうすればよかったんだ。
何をしても、どう足掻いてもついてくるなら、言ってしまえばよかったんだ。

ため息混じりで言いながら、大河を見れば今まで見たことのない笑顔をしている。

「6月ですね。出張の予定は・・・慶太郎に調節させます」
「だから!私の休みも決定してないんですけど」
「大丈夫です。まだ時間がありますので、調節させます」

なんか、ごめん。

達ちゃんと慶太郎に心の中で謝っていれば、景色を楽しむ間もなく伊勢に到着した。

< 4 / 83 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop