月とスッポン  一生に一度と言わず
「行きたい場所ではなく、興味がある場所ですからね」

あくまでも、と念を押す。
送った場所を目を輝かせながら確認している大河を横目に
「旅のしおりとか作らないですよね」と呟く。

「しおりですか?」
「修学旅行の時とかタイムスケジュールとか書かれたしおり。貰いませんでしたか?」

「ありましたね。ご希望なら作りましょうか?」
「貰った瞬間、比叡山行きはなくなりますけどね」

「えっ」
「びっしりと決められた計画を見ると行く気がなくなるんですよねぇ。
違うなぁ。しっかりと調べて計画を立てると、それが目的になって完成した瞬間『終わった』って思っちゃうんですよね。行った気になるって感じ?」

「ではこのピックアップ作業は?」
「行きたい所を全部上げるとルートが見えてくるから?」
「なるほど。あらかじめ目的から全体像を把握し、そこへ辿り着くルートを導き出すのですね」

いや、そこまで大層な事はしていない。

「そこで発生しうる問題を予想して、解決策を検討、回避ルートの確保。素晴らしいです」

だから、そこまで大層な事は考えていないし、していない。と言うより、褒められていない気がする。
むしろ、馬鹿にされている気すらする。

「私は茜を不快にさせる発言をしたのですか?」

心を読まれたのかと驚き「えっ」と強めの声が出た。

「眉間に皺が寄っています」

目は口ほどに物というだったか?

「不快っていうか、私の事馬鹿にしてるにはそっちですよね」
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