月とスッポン  一生に一度と言わず
思っていた反応と違っていたのか。
大河はコテっと首を傾げる。
可愛いでないか!

「何を褒めるんですか?休みの日に出勤して貰ったとしても、“来てくれて助かったありがとう”、“今度休み変わるからいつでも言って”ぐらいは言いますよ。だけど、それ以上は言いません」
「それだけですか?」

「仕事です。出勤しただけでお金は貰えます。無償ではありません。それ以上に何が必要なんですか?」

よくわかりませんと首を傾げる。

「この職につくのを夢見て働いているわけではなく、お金が欲しいから働いているんです。休日に出勤すると決めたのなら、その分時給が発生するのですから働くは当然です。外せない用事なら断ればいいのですから」
「断れない仕事もあります」

「それでもやると決めたのは本人です。なので、感謝をし労います。無理をしていていないかとか労働基準に反してないかとか考えるのは私の仕事ではない」

もちろん、ヤバそうなら上にたっちゃんには報告しますけどと自己フォローは入れておく。

「お客には褒めます。でもそれは、気持ちよく食事をして貰うのが私の仕事だからです。
と言っても、褒めるのはその人ではなく、その人が持っているモノを褒めるようにはしています。『こういうのが欲しいと探している』とか『新しいそれが欲しいのでつい見ちゃった』とかぐらいですけどね」

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