月とスッポン  一生に一度と言わず
「あーちゃんが行くなら私も行きたい」
と叫ぶ海の後ろから
「私は聞いていません」と声が聞こえた。

「えー知らないの」と大河さんに自慢げに言っている。

「何も決まっていないからではないでしょうか?」

本庄さんが冷たく言い放つと、
「時間がないので皆さん準備をしてくださいね」と微笑んでいる。
(遊んでないで、さっさと準備をしろ)
と副音声が聞こえそうな笑顔だ。

大人達がワイワイとやっている間に、準備をしてしまおうと子供達の服を用意する。

「着替えは俺がやるから、梨花は着替えておいで」

海が用意してくれたスタイリストさんにより仕上がっていく自分を鏡越しに見る贅沢なひと時を過ごし翔空達の元へ戻る。

子供達もおめかしししていて、ついその姿を写真に収めてしまう。

大人の作戦会議は終了していたらしく、皆待機場所に移動する。

私たちは翔空に丸投げして裏口近くで遊んでいればいいだけなので、気楽なものだ。

よくわからない花を見つけたり、ダンゴムシがいないか探したりしているうちに裏口から会話が聞こえてくる。

「茜ちゃんが来たみたいだよ。一緒に花嫁さんを見ようって誘うんでしょ」

予定通り龍平をダシに使う。

「うん」と崖足で翔空の所へ走って向かったのはいいが、恥ずかしくて言えなくてウジウジしている。

通常運転だ。

一生懸命歩いて翔空の元へ行こうとしている大我を見守りつつ、翔空達と合流する。
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