月とスッポン  一生に一度と言わず
「タバコは健康に良くありませんよ」

聞き覚えのある声の方を振り向けば、ヤツがいる。
お酒とタバコの相乗効果で都合のいい夢が見れるようになったのか?
それはいい事を知った。

でも、出てくるのならこいつじゃなくて海が良かった。

彩華さんと海と3人で、また賑やかな正月を迎えたかったなぁ。

そんな事を考えながら、立ち上がり歩き始める。

「えっ、無視しないで下さい」

どことなく嬉しそうに聞こえるので、ご希望に答えて無視をしよう。

「鍵あいていたんですか!」

夢の中なら出入り自由だろうに。

ラグの上に座れば、大河も私の隣に座る。
誰かが隣にいる安堵感に少しだけ行動が大胆になる。
大河に寄りかかる。

「何をしに来たんですか?」

私を押し除けることない夢の大河は優しい。

「1人で家にいると伺っていましたので、連絡があるかと思ったのですが。連絡が来なかったので、来てしまいました」

「てへっ」じゃない。

「挨拶周りとかで忙しいかと」

夢の中でも可愛くないな、私。
夢に中なら少しぐらい本音を話せばいいのに。

「それがイヤで逃げているんですよ。1人で何をしていたんですか?」
「惰眠を貪ってました」

「お酒?酔っ払っているのですか?」
「酔ってません」
「アルコール度数3%ならそうでしょうね」

ため息が聞こえる。

「これを気にやめましょうね」

やめる、やめないのレベルではない。
言い返したいが、言い返すのすらめんどくさい。

「ラグを買ったんですね」
「誰かさんが人が住む部屋じゃないって言ったので」
(そこまで言ってはいません)

「1人で飲んでたのですか?」
「一緒にいてくれる人がいないんです。寂しいですね」
(呼んでくれればすぐに来ましたよ)

「ひとり者同士お出かけしませんか?」
「どこか行こうかと思ってました」
(ならちょうどいいですね)

「準備万端、あとは目的地を探すだけ」
「では出かけましょうね」

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