月とスッポン 一生に一度と言わず
「茜、起きて下さい。着きましたよ」
大河の声で覚醒する。
1人満喫セットを抱えて、私はどこにいる?
放心状態の私を見ながら大河が笑っている。
ドアを開ければ一気に冷気が車内を駆け巡り、身震いをする寒さだ。
「寒っ。ってかここどこ?」
私のお泊まり鞄を持った大河が外で待っている。
「本当に寒いですね」と言いつつもご機嫌な大河の後を満喫セットを持ったまま追う。
大河もスタッフも当然の如く受け入れ中に入っていく。案内すらない。
もしかして、スタッフではなく、使用人?
ってか、ここどこ!
私の混乱をよそに開けられた扉から
「おつかれ、桃鉄の準備は万端だよ」
と泰臣さんに出迎えられた。
「なぜ桃鉄?」
思わず声に出た問いに、泰臣さんがニカッと笑う。
「それはね、大河が唯一勝てないゲームだからだよ」
大河が勝てない?
それはいい事を聞いた。
気分になる。
ローテーブルの上には、セットされたゲームとボトルやらピッチャーに入った飲み物、摘める軽食やお菓子などが並べられている。
私が行っていた惰眠のゴージャス版だ。
惰眠を貪る時はやる事は、金も地位も関係ないのかもしれない。
そう思いつつ、大河の悔しがる顔をつまみに一杯。
ワインではなく、美味しい葡萄ジュースを飲む。