「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
 新しくウイスキーのロックを店員から受け取った矢沢は、二口ほど飲んでからまたメニューを眺める。

「よく食べるな」

「胃袋がブラックホールで、食費がかかって仕方ない」

「へえ」

「気のない返事だな。美月ちゃんの料理は美味しいのか?」

 ちょうど和牛サーロインの最後の一切れを口に入れたところだったので、咀嚼しつつ美月の作る夕食を思い浮かべた。

 失礼な話だが、ここで追加注文して食べるより美月の優しい味の手料理を食べたい。

 今頃なにをしているだろうか。毎晩手の込んだ料理を作っているので、今日はのんびり過ごせているといいのだが。

「美味しい」

「だろうなぁ。毎日あんなに豪華な弁当を作ってくれるくらいだもんなぁ」

 男のひとり暮らしはだいたい同じ献立になるし、帰宅が遅くなるとインスタント食品で済ませる時も多くなる。

 それが日常だったし特に問題はなかったが、美月との生活に慣れてしまった今、昔のような食生活に戻されたら結構辛い。
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