「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「俺が好きなのは美月なんだ。もう一度チャンスがほしい」

「私たちはもう終わったの。やり直すなんてあり得ない」

 内村さんがいて、彼女のお腹には新しい命が育っているのに、軽率な言動しかしない陽平がもはや怖い。

 人の波に紛れて去ろうとしても、陽平は執念深さで行く手を阻む。通行人の目には恋人同士が痴話喧嘩をしているように映るのか、ちらちらと様子をうかがわれて辛い。

 ああ、もうっ、本当に嫌だ。矢沢さんと一緒にさっさと立ち去ればよかった。

 たくさんの感情がないまぜになって涙が瞳の奥から溢れてくる。陽平の前で絶対に泣きたくないのに。

 邪魔をされながらもどうにか前に進んでいると、車道の路肩に車がハザードランプを点滅させて停まった。

 ナンバープレートを見て、堪えていた涙が筋になって頬を伝う。

 運転席から下りた巧さんは一直線に向かってきて私の手を取った。それからスーツのポケットからハンカチを出して私に手渡す。

「先に車に乗っているか?」

 それは、巧さんは陽平と対峙するつもりでいると取れる。私の問題に巧さんを介入させておいて、ひとり逃げるのは違う。

「一緒に行きます」

「分かった」

 力強く手を握り直してくれたので、私もぎゅっと力を込めた。巧さんは陽平の正面に姿勢よく真っ直ぐ立った。客観的に誰かと並んでいるのを見ると巧さんがいかに高身長なのかが分かる。
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