「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「ただいまー!」

 扉を開けて大きな声で挨拶をした私の横で、父もぽつりと「ただいま」と呟いた。スリッパの音をパタパタと響かせて母が玄関に顔をのぞかせる。

「おかえり」

 母は私ににこりとした後、父を見て、また私を見る。

 離婚後時間が経っているからこそ、ふたりの間には気まずさがあるようだ。まだ別れた直後の方が自然に接していた。

 そう大きくない四人掛けのダイニングテ―ブルに母と父が並び、向かいに私が座る。こうして母が入れた緑茶で喉を潤わせていると、昔にタイムスリップしたような感じがした。まだ数年しか経っていないというのに。

 古くなった冷蔵庫のファンがカラカラと音を立てているのが耳につくくらい、私たちの間に静けさが漂っていた。

「ふたりとも集まってくれてありがとう。前から時間を作ろうとはしていて、急に余裕ができたんだ」

 まだ先が読めないので口を挟まずに黙って相槌を打った。

「父さんは、ずっと、自分の選択が正しいと思っていたかった」

 母はまだ動揺を引きずっているようで、そわそわと落ち着きなさそうにしている。こういう素直なところが少女のようで、いくつになっても可愛らしい人なのだ。
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