「君を絶対愛さない」と言ったクールな警視正に滾る愛を刻まれました
「熱いな。他の症状は?」

「それが、ないんです」

 私にとって高熱が出ること自体がめずらしく、三十八度を超えたのは小学生振りだ。いつもは喉か鼻をやられて微熱になったりするが、それも一、二日で平熱に戻る。

「突発的な高熱だけの症状なら、ストレスかもしれないな」

 身に覚えがあるので驚き、目を開いて巧さんを見つめる。

 ストレスで熱が出るなんて初めて知った。

「休もう。それが一番の薬だ」

 背中に手を添えた巧さんは、強引に私の部屋へ歩みを進める。

 プロポーズをされた翌日辺りから巧さんは仕事が忙しくなって残業が増えたため、朝は自分の足で出社するようになっていた。

 夕食を囲むこともなかなかできず、代わりにメッセージアプリでやり取りをするのがメインとなっていたため、巧さんの存在をはっきりと感じられるのは久しぶり。

 職場での出来事で弱っているせいか、単純に体調が悪いからなのかは判断しかねるが、触れられた場所からじんわりと安心感が広がっていく。

 誰かがそばにいてくれるって心強い。ひとり暮らしをしていると、不測の事態が起きてもひとりで対処しなければならないから。
< 93 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop