結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
遅い朝食後に、約束通り庭園の散歩へ出かけた。
庭園の深緑と蝉時雨がいかにも夏らしい。すでに太陽も高く昇っていて、昨日までの雨で濡れているはずの地面も、日向はすっかり乾いていた。
「もう暑いですね。すみません、私が朝寝坊したので遅くなりました」
「どちらかと言えば、僕のせいかと……」
「そうでした!」
それもそうだと怒って見上げたら、八木沢さんは面白そうに笑っていた。
八木沢さんは何事もなかったかのように振る舞うから、私も平静になろうと努めた。でも、手を繋ぐだけで緊張する。昨日も繋いでいたのに。
この長い指が私の内側を蹂躙していたのかと思うと、触れているだけで卑猥に思えてしまう。重症。
なるべく木陰を選んで歩いていると、自分の背丈ほどもありそうな白山菊が咲いていた。他にも、低い位置に小さな白い花がたくさん咲いている。葉の形から、カタバミの仲間のようだ。次はスケッチブックも持ってこようと思いつつ写真を撮った。
「和咲さんは、花が好きですか?」
「好きです。花が嫌いな人っているんでしょうか」
「枯れると散らかるから、敬遠する人はいますね」
「そうなんですね。私は好きです。花の絵を描くのも昔から好きで」
学校から配られたプリントや新聞広告の裏にずっと絵を描いている子供だった。就職してからは、もう長いこと絵を描いていない。それでも、かつての画材を捨てきれずにいた。