結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

「今度見せてください」
「恥ずかしいからいやです」
「……僕にだけ見せてください」

 僕にだけ、と言われて心臓がどくんと跳ねた。「わかりました」と返事をして、自分でも気づかないうちに、この人は特別な存在になっていたんだなと思った。
 暑さには勝てず、短めの散策路を選んで歩いて部屋に戻る。帰路の相談をしながら、最近ずっと思っていたことを伝えた。

「私のことを、苗字じゃなくて名前で呼んでくれますよね。それが、すごく嬉しいです。ありがとうございます」

 名前を呼ばれるだけで嬉しい。私がそう言うと、八木沢さんの頬に朱が差した。
 私がそれに気づいたからか、私から視線をそらして彼が呟いた。

「対抗心です」
「え?」
「この前、あなたの元婚約者は『和咲』と呼び捨てにしていた。僕は苗字で呼んでいたのに。だから対抗しました」

 そういえば、あの日から名前で呼ばれている気がする。それで照れてるの、可愛い。
 私も「東梧さん」って呼んでみる……? と想像して恥ずかしくなってやめた。もうちょっと慣れたら、私も名前で呼べる日がくる……かもしれない。


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