結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 二日目も、初めて箱根に来た私のために、モデルコースのような観光ルートを巡ってもらった。人気の美術館を二つ見て回り、強羅の有名店で行列に並んでお昼を食べて、箱根ケーブルカーとロープウェイに乗って大涌谷(おおわくだに)へ。

 美術館は夢中になってしまって、途中で八木沢さんから「僕のペースは気にしないで、ゆっくり見てくださいね」と言われたので、お言葉に甘えた。
 思う存分鑑賞して、ミュージアムショップで彼と合流してから謝った。

「ごめんなさい。私だけ立ち止まることが多かったですよね」
「楽しそうなあなたを見ていたから大丈夫です。それより、和咲さんにお土産です」

 八木沢さんが手に持っていたのは、この美術館の収録作品の図録だった。

「こんな、高価な本を頂いていいんですか?」
「欲しいんじゃないかと思って」
「わああ、うれしい! ありがとうございます!」

 嬉しくて涙が出そうだ。欲しいなと思っても、カラーの図録は高価だから、私のお財布事情では何冊も買えない。私があんまり喜ぶからか、八木沢さんが「もっと買ってきます」と言って、企画展の図録など、ショップに置いてあるあらゆる図鑑を買いそうになっていたので慌ててとめた。

 楽しくて楽しくて、こんなに楽しくていいのかな……と、不安になった。
 両親のように、突然いなくなったらどうしよう。八木沢さんを失う日が来たら、きっと耐えられない。

 箱根湯本の土産物屋も見て回り、小田原城にも寄り道した。
 東京に戻り、首都高をおりて、もう見慣れてしまった新宿の街並みを眺めていたら、だんだん寂しくなってきた。帰り道は、どうしてこんなに早く感じるんだろう。


< 111 / 264 >

この作品をシェア

pagetop