結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「八木沢さん、運転お疲れ様でした。ありがとうございました」
「久しぶりに運転できて、楽しかったです」
マンションの地下駐車場に到着して、八木沢さんがエンジンを切ると車内が静かになった。私はなんだか胸がもやもやして、息をとめた。
なんだろうこの感情……わからない。
「荷物は僕が持ちます。和咲さん、どうしました? 具合悪いですか?」
「違うんです。動きたくない……」
シートベルトは外したのに私が動かないから、車酔いでもしたのかと八木沢さんが心配している。こんな感情初めてだから、自分の膝を見つめながら伝えた。
「わからないんです。家には帰りたいのに……すごく楽しかったから、もう着いちゃったのが寂しいんです」
遊園地が楽しくて帰りたくないと泣く幼子みたいだ。子供じみたことを言ってしまったと後悔していたら、八木沢さんが小さく笑うのが聞こえた。顔を上げて運転席を見ると、ハンドルに腕を乗せて八木沢さんが困ったように笑っていた。
「それはつまり、もっと一緒にいたい?」
「そう、です」
しつこくて嫌がられるかなと恥ずかしくなってうつむいたら、体を引き寄せられて抱きしめられた。
「うちに来ますか?」
「……はい」
「僕も、もっと一緒にいたいです。こんなに一緒に過ごしたのに、まだ足りない」
ああ、同じように思ってくれてよかった。それだけで胸がいっぱいになる。
ため息をついたら、彼の指が唇をそっと撫でた。
八木沢さんが優しく笑ってくれたから、私は安心して体を預けた。