結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「食事はすませてきたので、シャワー浴びてきます。その間、自由にしていてください」
そう言い残して、八木沢さんが寝室を出て行ったから、ベッドの端に腰掛けてしばらくぼんやりした。どうしてこうなった。どうして。
飾り棚と観葉植物だけの、無駄のないシンプルな部屋。ウォークインクローゼットが広くて、「ここに住めるな」と、初めて玄関を見たときと同じことを思った。
クローゼットの隅に本が十数冊置かれていたから、どんな内容だろうと手に取った。
ほとんどが数年前の経済誌だったから資料用に保管してあるのかもしれない。その中に一冊だけカラフルな表紙の旅行誌が混ざっていたので、どこに行ったんだろうと引っ張り出した。
「上海! 行ってみたい、いいなあ」
何気なくぱらぱらとページをめくっていると、一枚の写真が床に滑り落ちた。
ストレートの長い黒髪が印象的。背景は上海の観光地。
モデルのように細い体の美女が、そのスタイルの良さをさらに強調するように、綺麗にポージングして写っていた。
カメラを向けている人のことが好きなんだろうなと思う、そんなきらきら輝くような笑顔。その表情は自信に満ちあふれていて、きっと注目されたり賞賛されたりすることに慣れている。
これが、『サキさん』なのかな。素敵な人。どんな恋だったんだろうと想像すると、胸が痛くて苦しくなる。
私は嫉妬した。
今でも八木沢さんの心を支配して、彼の行動を縛り付けているこの人に、嫉妬した。