結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
「八木沢さん、離れてください」
「んー……やだ」
「やだじゃないです。ここ家じゃないですよ、起きてください」
背中をぽんぽん叩いたら、ようやく目が覚めたようで、自分の下にいる私と、それから芝生広場を見渡して、ぱっと体を離して両手で顔を覆っていた。
「……すみません。寝ぼけました」
「そうですね。ほら、向こうの若いカップルがびっくりして見てますよ」
照れて下を向いている八木沢さんが可愛いので、私も押し倒したくなったが我慢した。
まだぼんやりしている彼に、「コーヒー買ってきますね」と告げて、すぐ近くのコーヒーショップまで歩いた。
行列が出来ていたので待ち時間にスマホを見ると、古美術商から連絡がきていた。再鑑定の依頼をしているので、その件だろう。
骨董品の管理とお手入れ、そして売却が私の仕事だから、それらが終わったら私のいる意味はなくなる。真臣も本日めでたく結婚したし、「復縁をせまる元彼から逃げるため」という理由もなくなった。
先日、八木沢さんの職場の集まりにも連れて行かれた。槙木さん曰く「いつも東梧にお見合い話を持ってくる部長に、見せつけたかったんだろ」とのことだった。お見合いの話が減れば、「しつこいお見合い話をかわすため」という理由もなくなる。
全ての理由がなくなっても、八木沢さんの隣にいたいと思っていいのかな。
永遠子から「本当に結婚しないつもりですか?」と聞かれたことがある。八木沢さんは結婚の話題を一切出さない。だからといって、私を軽く扱うこともなく、「彼女」として大切にしてくれる。でも、これ以上踏み込んだら、きっと拒否される。