結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 アイスコーヒーを二つ持って戻り、古美術商の方から連絡があったことを八木沢さんに伝えた。

「以前、お話した再鑑定の件です。再来週、来て頂けるよう調整中です」
「ああ、ありがとうございます。代替わりした方?」
「そうです。改めてご挨拶したいとのことなのですが、大丈夫ですか?」
「いいですよ。土日なら何時でもいいので、日時が決まったら教えてください」

 おじい様が懇意にしていた古美術商があったが、おじい様の死後しばらくして、その店主さんも亡くなり、後継がなかなか決まらなかったそうだ。数年前にようやく落ち着き、その際に先方から「買い取りさせて欲しい」と挨拶に来たが、八木沢さんが忙しく、長らく保留状態だった。

 私に財力があればいいのに。食器類は私が全部買い取りたい。特に茶器、あと小皿も。あれもこれも、売ってしまうのは寂しいな……と考えながら八木沢さんの隣に座ってコーヒーを飲んでいると、彼が不意に私のスケッチブックを開いた。

「あっ、恥ずかしいから見ないでください!」
「……約束でしょう? 僕にだけ見せて」

 鷹揚に笑いながらそう言われて、(この人、声がいいのを自覚してるのかな。囁かれると逆らえないんですけど!)と思った。


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