結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

「小さな花びらを丁寧に描いているのがあなたらしい」
「細い筆でちまちま描くの好きです」
「額に入れて飾りましょう。これ全部、僕にください」
「はい? 全部?」

 小学生の頃、夏休みの絵画コンクールで賞を獲ったら、祖父母が喜んで額に入れて飾ってくれたのを思い出した。あの絵は、家屋の取り壊しのときに捨てられただろうな……。

 絵が欲しいなんて言われたのは初めてで面映ゆい。せめて一枚にしてくれとお願いしたら、八木沢さんが選んだのは、黄色いスプレーマムの絵だった。私も気に入っている絵だったから嬉しかった。

「差し上げる前に、もうちょっと描き込んでもいいですか?」
「勿論、いいですよ。このままでも十分綺麗ですが。絵を描くのは楽しい?」
「楽しいです。時間を忘れます!」
「そう、良かった。それが一番ですね」

 静かに笑ってそう言われて、すべてを肯定してもらったような気持ちになった。
 恥ずかしいから、出来上がるまで黙っておこうかと密かに計画していたことがあるが、八木沢さんには言ってもいいかなと思って伝えることにした。


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