結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
土曜日の早朝。
私はマンション前の道路を掃除していた。管理人さんがいるのでいつも綺麗だが、秋になり少しずつ落ち葉が増えている。
正面玄関から出て、横の駐輪場へ。そこから中へ戻って、101号室の前の廊下を掃除して部屋に戻るのが、私のルーティン。
以前、馬木さんから「誰も住んでなかった101号室に引っ越してきたから、大家さんの親戚か新しい管理人さんだと思っていた」と言われたことがある。その言葉が、お掃除を始めるきっかけになった。
八木沢さんにはお世話になりっぱなしなので、少しでも役に立ちたいと思って始めた。ほとんど自己満足の、本当にささやかなこと。
けれど、定期的に続けていると、顔見知りになったマンション住民の方から挨拶されるようになり、話しかけてくださる方もいて、朝からとっても元気になる。
ここには、様々な年代の方が住んでいる。だからなんとなく、大家族みたいで楽しいな、と勝手に思っていた。
今日は午後から、再鑑定のために古美術商の方が来る。埃のないように、まめに掃除や換気はしているが、自室や水回りも念入りに掃除した。
土曜夜から日曜にかけては、いつの間にか八木沢さんと一緒に過ごすのが当たり前になっていた。その代わり、土曜の午前中は約束を入れない。暗黙の了解で、それぞれ一人で過ごす時間にしていた。
でも今日はなぜか、「お邪魔していいですか?」と、朝から八木沢さんが一階におりてきた。
これまで骨董品には興味なさそうだったのに、いざ売るとなると気になるのかな。
特に気に入っている有田焼の茶器を拭いていると、彼が言った。
「それは売りません。リストから外してください」