結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
私は少々浮かれつつ、お茶のおかわりを準備した。別の銘柄を選んだら、八木沢さんがキッチンに立つ私にちらっと視線を送ってふんわり笑ってくれた。
最初に淹れたのは来客用の高級玉露。さっき淹れたのは、彼が最近気に入っている頂き物の上煎茶。気づいてくれたのかな、と嬉しい。
帰る間際、店主さんが八木沢さんに「あの壁にかかっている絵もいいですね。これはどなたによるものですか?」と尋ねていた。
八木沢さん、壁に絵なんか飾ってたっけ?
振り返ると、皆が見ていたのは、私が描いた花の絵だった。
豪華な額に入っているから、それらしく見える……かもしれない。
八木沢さんは何食わぬ顔で「筆遣いが繊細で綺麗ですよね」などと言っている。恥ずかしい。いたたまれないので、おずおずと手を挙げた。
「それは、私が趣味で描いたものです……」
「そうですか! 優しくて柔らかくて素敵だなと思いました。他の絵も見てみたいです」
「ありがとうございます……恐れ入ります」
「趣味とおっしゃってましたが、売りたくなったら私を呼びつけてくださいね」
にっこり笑っていたが、どこまで本気かわからない。美術品を扱う人に言われたら恐縮してしまう。