結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~
小さな物は車に積み込んで、大きな物は後日運び出すことになり、その作業も終わって皆さんを見送ったあと、空いた棚などを掃除することにした。その間、八木沢さんはなぜか少し不機嫌だった。
「若旦那さん、丁寧で優しい方でしたね」
そう声をかけたけれど、返事がない。どうしたんだろうと思ったら、急に後ろから抱きしめられた。
「ひゃあ! どうしたんですか?」
「絵を売るんですか?」
「売りません、というか売れるわけないですし」
「僕のものなのに。横取りされた気分です」
「だから売りません! あれは営業トークの一環ですよ」
真に受けるほど純粋ではない。大学で少し勉強しただけの素人だ。自分のことは自分がよくわかっている。
「そんなことないですよ。あなたが、自分が描いたと手を挙げたとき、彼の目が輝いたのに気づきませんでした?」
「気づきません! 気のせいです。あの絵は八木沢さんにあげたものだから、八木沢さんのものです。誰も横取りなんかできません」
「僕だけのもの?」
「……全部、八木沢さんのものですよ」
まるで焼きもちを焼いているみたいだから、可愛いなと思って腕をぎゅっと抱きしめた。