結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

現在


 十二月。
 臨時国会も終了して、八木沢さんの忙しさも一段落した。
 合鍵を預かってから二か月経つが、私はまだ一度もこれを使っていない。結局いつも一緒にいるし、八木沢さんのいないときに家に入ろうとも思わない。御守みたいな気がして、自分の家の鍵と一緒にカードケースに入れている。


 クリスマスの時期に、槙木家が押しかけてくるのは毎年の恒例行事らしく、日程を決めてケーキを注文することになった。

 ケーキ! 憧れのホールケーキ!

 カタログには、クリスマス定番のブッシュドノエル、フォトジェニックな可愛いケーキや期間限定のツリーの形をしたチョコレートケーキなどもあったが、結局王道のショートケーキを選ばせてもらった。
 雪のような白いシャンティーに、彩り鮮やかな苺、クリスマスらしいチョコの飾り……幸せの具現化だ。
 当日、華やかなクリスマスケーキを前に、私は綾ちゃん以上にわくわくしていたと思う。

「これまでの人生でカットされたケーキしか食べたことなくて……これがホールケーキ!」

 食の細い祖父母との三人暮らしで、子供の頃はホールケーキには全く縁がなかった。一人暮らしの時期に買ってこようかと企んだことがあるが、食べきれる気がしなくて勇気が出なかった。

「ケーキ屋さんで受け取る時、見たことないくらい緊張してましたよね」
「だって貴重な苺がたくさんのったクリスマスケーキですよ! 万が一転んで落としたり、倒したりしたら大変じゃないですか」

 買い出しの最後にケーキを受け取りに行ったので、他にもたくさん荷物を持っていた八木沢さんではなく、私がケーキの箱を持ったのだ。大変光栄な役目であった。


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