結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 寝ぼけ眼の槙木さんは、テーブルを片付けていた八木沢さんを見て、唐突に質問した。

「和咲ちゃんに合鍵渡したってホントか?」
「ああ、でも別に深い意味はない」
「意味あるだろ」
「ないよ」
「いや、あるだろ……結婚しろー」
「結婚はできない」

 八木沢さんは、躊躇うことなくそう答えた。
 はっきり否定されて私は動揺した。

 付き合い始めるときに、「結婚を前提としないこと」については、納得していたはずなのに。彼には結婚願望がないってわかっていたはずなのに。

 一線を越えるとき、私は「仮でいいから一番近くにいて欲しい」と伝えた。八木沢さんは誰よりも近くにいてくれる。心も体も。

 一緒に過ごす時間が増えて、それがどんどんかけがえのないものになっていって、私は欲張りになっていた。仮でいいと口では言いつつ、心の奥底では「ずっと続く」という約束を求め始めていた。

 二人の会話が聞こえなかったふりをして「お布団の準備できましたよ~」と話しかけたけれど、そのあとは上の空だったようで、どんな会話をしたか覚えていない。

 一階の自分の部屋に戻り、預かった合鍵を取り出して眺めてみる。
 信頼の証のような気がしていたけど……単に便利だから渡しただけなんだ。


< 161 / 264 >

この作品をシェア

pagetop