結婚したくない二人の話~完璧イケオジエリートは、実は独占欲強めなケダモノでした~

 年の瀬、病院の受付で「今日から主治医がかわります」と告げられた。これまで診てくださっていた先生は産休に入ったらしい。採血を終えて待合室の椅子に座ったとたん、隣の老婦人から話しかけられた。

「新しい先生、イギリスから帰ってきたばかりの『美人過ぎる女医さん』らしいわよ」

 どこでそういう情報を仕入れるんだろうか、すごい。
 検査結果が出るのを待って診察室に呼ばれたが、新しい先生は「なるほど美人過ぎる」と納得する美女だった。

「主治医になりました、(かつら)です。引き継いだけど、戸樫さんは多分、今日で最後になるかな」

 私より年上だろうけど、仕草に色気があって、女の私でも間近で見るとドキドキする。才色兼備とはこのことだ。「女優さんが映画の撮影中なのかな? 私はエキストラの患者?」と、錯覚してしまいそう。

「二週間で病状はおおむね改善。しばらくは投薬しつつ途中から食事療法も取り入れ経過は良好。うん、今日の結果も良さそうね」

 血液検査の結果に問題がなければ、これが最後の診察になることは、前回の診察でも言われていた。食事療法は楽しく続けているし、いつもふらついていた以前と比べたら、自分でも元気になったと思う。

「戸樫さんが午前最後の患者さんなので、少し時間ありますよ。最後になにか聞きたいことはありますか?」

 優しく問われて、もっとこの先生に診てもらいたかったなと思った。それくらい魅力的な人だった。


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